STEAM教育とは?

STEAM教育とは?

テレビや雑誌、ネットのニュース記事などでも徐々に取り上げられることが多くなってきた「STEAM教育」。よく聞くようになり、なんとなく興味はあるけどもっと具体的に知ることで、自分の子どもや教育現場などで役立てたいと考えている方も多いのではないでしょうか?

そこで、本記事ではSTEAM教育についての事例を交えた詳細な解説と、今後の課題等について解説していきたいと思います。

STEAM教育の概要

STEAM教育(Science, Technology, Engineering, Arts, Mathematics)は、科学、技術、工学、芸術、数学の学際的なアプローチを組み合わせた総合的な教育の取り組みです。従来のSTEM教育に比べて、より幅広い学問領域を包括しており、生徒たちにさまざまなスキルと知識を提供することを目指しています。

  • Science:科学
  • Technology:技術
  • Engineering:工学
  • Arts:芸術
  • Mathematics:数学

日本では一般的に「STEAM教育」は「スティーム教育」と読まれています。

STEAM教育の特徴は、学問の壁を超えた学習体験を通じて、生徒たちが探究心や創造力を育むことができる点です。科学や技術の知識を基盤としながらも、芸術やデザインの要素を取り入れることで、より柔軟な思考力や表現力を養います。例えば、プログラミングを通じて自分のアイデアを実現するプロジェクトや、科学的方法論を活用して芸術作品を制作するなど、多様な活動が行われます。

STEAM教育は、現代社会に求められるスキルセットを育成する上で重要な役割を果たしています。例えば、テクノロジーの急速な発展によって、新たな職業や業務が生まれ、これまでとは異なる能力が求められています。STEAM教育は、このような変化に対応するための基盤を提供し、子どもたちが将来の社会で主体的に活躍できるようにサポートします。

さらに、STEAM教育は単に知識やスキルの習得だけでなく、問題解決能力やコラボレーション能力の育成にも力を入れています。現実の問題に取り組む中で、生徒たちはチームで協力し、情報を共有し、意見を交換することが求められます。これにより、コミュニケーションやリーダーシップなどの社会的なスキルも同時に育まれます。

また、STEAM教育は個々の興味や才能を尊重し、多様性を重視する教育アプローチです。生徒たちは自分自身の関心や得意分野に基づいて学びを進めることができ、その過程で自己肯定感や自己効力感を高めることができます。

STEAM教育は、次世代の人材育成や社会の発展のために不可欠な要素となっています。現在の子どもたちには、問題解決能力、創造力、チームワーク、継続的な学びへの意欲など、幅広いスキルと資質を備えることが求められています。STEAM教育は、そのような能力を育む場を提供し、教育の未来において重要な役割を果たしているのです。

STEAM教育の歴史

STEAM教育の歴史は、STEM教育の発展に始まります。STEM教育は、科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、数学(Mathematics)の学問領域を組み合わせたもので、学際的なアプローチを通じて生徒たちの問題解決能力や論理的思考を育むことを目指しています。

STEM教育が注目されるようになったのは、21世紀初頭のことでした。この時期、先進国においては科学技術の発展が著しく、そこから生まれる新たな職業や産業が求めるスキルセットに注目が集まりました。

STEM教育の概念が提唱されると、教育現場や政府、企業などさまざまな関係者がSTEM教育の重要性について議論を深め、STEM教育への取り組みが広がっていきました。

その後、STEM教育にアート(Arts)の要素を加えた教育アプローチが注目され、STEAM教育という概念が登場しました。アートの要素を取り入れることにより、STEM教育の範囲をより広げ、生徒たちの柔軟な思考力や表現力を養うことができるとされました。

STEAM教育は、2000年代半ばから徐々に世界中で広がりを見せました。特にアメリカ合衆国では、STEM教育とSTEAM教育に関する政策やプログラムが進められ、学校や教育機関での取り組みが広がっています。

また、STEAM教育は教育現場だけでなく、産業界や研究機関などの関係者からも注目されています。これは、STEM分野においても創造性や表現力が求められる現代社会のニーズに応えるためです。

STEAM教育は現在も進化を続けており、各国で教育改革の一環として取り組まれています。日本でもSTEAM教育の考え方に共感する教育機関や教育者は、STEAM教育の理念と活動を組織やカリキュラムに組み込むために努力しています。

STEAM教育のメリット

STEAM教育のメリットは以下のようなものがあります:

  1. 総合的なスキルの育成: STEAM教育は科学、技術、工学、芸術、数学の学際的なアプローチを組み合わせることで、生徒たちに幅広いスキルを養う機会を提供します。例えば、問題解決能力、論理的思考、創造性、表現力、コミュニケーション能力などが育まれます。
  2. 現実的な学習体験: STEAM教育では、実践的な学習や実験が重視されます。生徒たちは現実の問題に取り組みながら、実際の状況や課題を理解し、解決策を見つけることができます。これにより、学んだ知識やスキルが実生活で役立つことを実感することができます。
  3. 創造力と表現力の発展: STEAM教育では、芸術やデザインの要素を取り入れることが多いため、生徒たちの創造性と表現力を養います。例えば、プログラミングを通じて自分のアイデアを実現するプロジェクトや、科学的な方法論を活用して芸術作品を制作するなど、自己表現の場を提供します。
  4. チームワークと協力の育成: STEAM教育では、実践的なプロジェクトや活動を通じて、生徒たちはチームでの協力や情報共有、意見交換を行う機会があります。これにより、コミュニケーションやリーダーシップなどの社会的なスキルを育むことができます。
  5. 将来の働き方に対応: STEAM教育は、現代社会において求められるスキルセットを育むための重要な役割を果たします。例えば、テクノロジーの急速な発展によって新たな職業や業務が生まれており、これまでとは異なる能力が求められています。STEAM教育は、このような変化に対応するための基盤を提供し、生徒たちが将来の社会で主体的に活躍できるようにサポートします。
  6. 自己肯定感と自己効力感の向上: STEAM教育は、個々の興味や才能を尊重し、多様性を重視する教育アプローチです。生徒たちは自分自身の関心や得意分野に基づいて学びを進めることができ、その過程で自己肯定感や自己効力感を高めることができます。

これらのメリットを通じて、STEAM教育は生徒たちが持つ潜在能力を引き出し、将来の成功につなげる重要な教育手法と言えます。

STEAMとSTEMの違い

これまでの内容と重複する部分もありますが、ここでSTEAMとSTEMの違いについて解説いたします。

STEAM教育とSTEM教育は似ている部分もありますが、いくつかの違いがあります。

まず、STEM教育(Science, Technology, Engineering, Mathematics)は、科学、技術、工学、数学の学際的なアプローチを組み合わせた教育です。STEM教育は、科学や技術の基礎知識と応用力を重視し、生徒たちに問題解決能力や論理的思考を育むことを目指しています。

一方、STEAM教育はSTEM教育に加えて、芸術(Arts)を含めた学際的なアプローチです。これにより、生徒たちは科学や技術を基盤としながらも、芸術やデザインの要素を取り入れることができます。STEAM教育は、より幅広い学問領域を包括しており、柔軟な思考力や表現力を養うことを重視しています。

また、STEM教育はテクノロジーやエンジニアリングに関連する職業や業務の需要に対応するために注目されています。一方、STEAM教育はSTEMの要素に加えて、芸術やデザインのスキルを持つ人材の需要にも対応しています。芸術的な視点や表現力は、創造的な問題解決やイノベーションにおいて重要な要素となるため、このような能力は現代の社会でますます求められています。

両教育はどちらも重要であり、それぞれに異なるアプローチや目標があります。STEM教育は科学や技術の基礎を学び、応用力を高めることに重点を置いています。一方、STEAM教育は、幅広い学問領域と創造性を組み合わせて生徒たちの能力を育むことを目指しています。どちらの教育も、現代社会の変化に対応するために不可欠です。

小学校での取り組み

小学校ではSTEAM教育の実施に向けて、さまざまな取り組みが行われています。以下にいくつかの具体的な事例をご紹介します。

  1. プロジェクトベースの学習:テーマごとにクラス全体でのプロジェクトを行うことがあります。例えば、自然環境をテーマにしたプロジェクトでは、生徒たちは野外での観察や実験を通じて科学的な知識を学び、さらにデザインや美術の要素を取り入れて作品を作成するなど、複数の学問領域を統合して学ぶことができます。
  2. ロボットやプログラミングの活用:ロボットやプログラミングの教材を取り入れた学習が行われることもあり、生徒たちはロボットを組み立てたりプログラミングを学んだりすることで、論理的思考や問題解決能力を養います。また、チームでのプロジェクトや競技会なども行われ、協力や競争する力も育まれます。
  3. アートを取り入れた授業:芸術的な要素を取り入れた授業が行われることもあります。例えば、科学の実験を通じて絵画や彫刻を制作する、音楽やダンスと組み合わせた創造的なパフォーマンスを行うなど、芸術と科学を結びつける活動が行われています。これにより、生徒たちは表現力や想像力を発展させることができます。
  4. 産業・地域の連携:地域の企業や専門家との連携を通じて、実践的な学びを実現する取り組みも行われています。例えば、地元の工場や研究所を見学したり現場の仕事に関わったりすることで、生徒たちは現実の社会とのつながりを体験しながら将来の進路や職業についても考える機会を得ることができます。

これらの取り組みを通じて、小学校のSTEAM教育は生徒たちの多様なスキルや資質の育成を目指しています。一方で、教育現場や教師の専門知識、設備・教材の充実など、さまざまな課題も存在します。これらの課題に対しては、教育委員会や学校、教師の継続的な取り組みや支援が求められています。

文部科学省とSTEAM教育

文部科学省ではSTEAM教育の重要性を認識し、その普及と実施のためにさまざまな取り組みを行っており、文部科学省のサイトではSTEAM教育の目的について以下のように記載されています。

AIやIoTなどの急速な技術の進展により社会が激しく変化し、多様な課題が生じている今日、文系・理系といった枠にとらわれず、各教科等の学びを基盤としつつ、様々な情報を活用しながらそれを統合し、課題の発見・解決や社会的な価値の創造に結び付けていく資質・能力の育成が求められています。
文部科学省では、STEM(Science, Technology, Engineering, Mathematics)に加え、芸術、文化、生活、経済、法律、政治、倫理等を含めた広い範囲でAを定義し、各教科等での学習を実社会での問題発見・解決に生かしていくための教科等横断的な学習を推進しています。

引用:STEAM教育等の各教科等横断的な学習の推進:文部科学省

文部科学省では、学校教育におけるSTEAM教育の重要性を啓発し、教育現場への浸透を図るためのガイドラインや資料を作成しています。これにより、教育者や教育関係者がSTEAM教育を実践するための指針を参考にすることができます。

また、文部科学省は、STEAM教育に関連する研究や実践事例の情報共有を促進しており、科学技術振興機構などの研究機関と連携してSTEAM教育の効果や方法についての研究を行っています。そして、その成果を公開し、教育現場への活用を支援しているのです。

文部科学省では、STEAM教育に関するプロジェクトやイベントの実施も支援しています。例えば、STEAM教育に特化した学校や教育機関への助成金や補助金の交付、教育現場での実践発表会や交流イベントの開催などが行われています。これにより、教育現場でのSTEAM教育の取り組みを促進し、ベストプラクティスの共有と普及を支援しています。

さらに、STEAM教育の導入や教育改革に向けた教育関係者への支援も行っています。教育者向けの研修やワークショップの実施、教材や教育ツールの提供、教育現場の課題に対する相談やアドバイスの提供などを通じて、教育者のスキル向上と教育環境の改善を目指しています。

これらの取り組みにより、日本でもSTEAM教育は徐々に普及してきました。しかし、まだまだ多くの課題があり、その課題解決のための取り組みが必要です。文部科学省は、引き続き教育現場や教育関係者と協力し、STEAM教育の重要性を広く認知しながら推進していく方針を固めています。

STEAM教育の課題

ここまでSTEAM教育の良い点について触れてきましたが、とはいえまだ多くの課題があるのも実情です。以下にいくつかの主な課題を挙げます。

  1. 教育者の研修と準備不足:STEAM教育は従来の教育アプローチとは異なるため、教育者は新しいスキルや知識を習得する必要があります。しかし、十分な研修や準備が行われていない教育者も少なくありません。教育者の適切な研修とサポートが重要です。
  2. 教材や設備の不足:STEAM教育には実践的な学習と実験が欠かせませんが、教材や設備の不足が課題となることがあります。十分な予算やリソースが割かれていない場合、生徒たちの学習体験が制限される可能性があります。
  3. 評価と評価基準の確立:STEAM教育では、従来の評価方法が通用しづらい場合があります。生徒たちの探究や創造力を評価するために、新たな評価基準や方法が必要です。このような評価基準の確立には、まだ多くの時間が必要な状況です。
  4. ジェンダーの不均衡:STEM分野においては、女性の参加率が男性に比べて低いというジェンダーの不均衡が課題となっています。STEAM教育においても、女性や少数派の生徒たちが活躍できるような環境づくりが求められています。
  5. カリキュラムの統合と連携:STEAM教育は学問領域の統合を重視していますが、従来の学校のカリキュラム構成や教育システムとの連携が課題となることがあります。各教科の教育者や学校全体の協力が必要です。

これらの課題は、STEAM教育の発展と普及において取り組むべき重要なポイントです。教育行政や教育機関、教育者、保護者、そして生徒たちが連携し、これらの課題に対処する必要があります。